科学研究費による研究「人工甘味料の摂取による体重増加における条件性満腹感消去の役割と肥満防止策の開発」
研究課題番号:15K04199 研究期間 2015年4月1日~2018年3月31日(予定)

人工甘味料のワナ

2015年度の研究の成果

2015年度の研究では、人工甘味料入りのヨーグルトを摂取したラットと、通常の甘味料であるグルコース入りのヨーグルトを摂取したラットとの比較を行った。ヨーグルトの摂取期間は5日間であった。その結果、人工甘味料入りのヨーグルトを摂取したラットの方が、体重の増加が著しかった。ただし、飼育ケージおける飼育用飼料の摂取量にも差が無かった。したがって、体重の増加は、広い意味での代謝の変化がもたらした可能性が考えられる。また、ヨーグルト摂取期間が終了した後に、オペラント箱において、レバー押し行動に砂糖ペレットを随伴させて、砂糖ペレットに対する行動を比較した。その結果、レバー押し行動にも差は見られなかった。
この結果は、以下の学会で報告された。

青山謙二郎 人工甘味料摂取によりラットの体重は増加する:サッカリン摂取が体重及び砂糖ペレット摂取行動に及ぼす影響
日本行動分析学会第34回年次大会 大阪市立大学 2016年9月11日

2016年度の研究の成果

2016年度の研究では、人工甘味料入りのヨーグルトを摂取したラットと、甘味料を含まないプレーンヨーグルトを摂取したラットとの比較を行った。ヨーグルトの摂取期間は3週間であった。どちらの群のラットも与えられたヨーグルトを全て食べた。すなわち、ヨーグルトから得たカロリー量には差が無かった。この3週間の間では、人工甘味料入りのヨーグルトを摂取したラットの方が、体重の増加が激しく、また飼育ケージおける飼育用飼料の摂取量も多かった。さらに、ヨーグルト摂取期間が終了した後に、オペラント箱において、レバー押し行動に砂糖ペレットを随伴させて、砂糖ペレットに対する行動を比較した。その結果、レバー押し行動も、人工甘味料入りのヨーグルトを摂取していたラットの方が多かった。これらの結果は、甘味はあるがカロリーの無い人工甘味料の摂取をくり返す内に、甘味によって生じる飽和作用が減弱するとの仮説を支持するものであった。
これら一連の結果は、以下の学会などで報告された。

Aoyama, K. Effect of saccharin consumption on body weight and operant-responding reinforced by sucrose in rats.
Society for the Quantitative Analysis of Behavior 39th Annual Meeting
Hyatt Regency, Chicago, USA, May 28, 2016

Aoyama, K. Craving for artificial sweetener: Incubation of saccharin craving and involvement of dopamine (DA) D1 receptors.
31st International Congress of Psychology
Contributed Symposium July 27, 2016
Effects of non-nutritive sweeteners on food seeking, food intake, and health
Organizer: Grimm, Jeffrey (United States of America)

また、人工甘味料に対する渇望の研究の成果は、以下の論文において報告された。
Aoyama, K., Barnes, J., Koerber, J., Glueck, E., Dorsey, K., Eaton, L., & Grimm, J. W. (2016). Systemic injection of the DAD1 antagonist SCH 23390 reduces saccharin seeking in rats. Appetite, 105, 8-13.