研究紹介のページ 4 食べ止むのはなぜ?
Kenjiro Aoyama’s Page
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食べ止むのはなぜ?(2)
科学研究費(基盤研究C 課題番号21530778)2009-2011年度
課題名 健康な摂食量を実現するための、「食べ止む」要因の実験的な解明とその応用
研究結果の概要
①ラットを対象としたセッション内減少に対する条件性飽和の効果について
ラットがグルコース溶液を摂取する際のリッキング行動(溶液を舌でなめる行動)のセッション内減少に条件性飽和が及ぼす影響を検討した。実験経験のないWistar系雄アルビノラットを被験体として用いた。条件づけの段階では、ラットは20%のグルコース溶液と40%のグルコース溶液を毎日30分間、8日間(各溶液を4日ずつ)摂取した。40%溶液の方が20%溶液よりも栄養価は高い。毎日、30分間の実験セッション中で摂取した溶液の重量(g)とリッキングの回数を計測した。それぞれの溶液には区別できる風味を加えておいた。風味はレモン風味とストロベリー風味であり、風味と濃度の組み合わせは被験体によりカウンターバランスした。溶液の提示順序はABBAデザインで交替させた。
その後のテストの段階では、ラットはそれぞれの風味がつけられた30%のグルコース溶液を30分間与えられた。それぞれの風味で4日ずつ、計8日間のテストを行った。テストにおいても溶液の提示順序はABBAデザインで交替させた。
その結果、条件づけの前半4日間は、40%のグルコース溶液と20%のグルコース溶液は同じ量が摂取されたが、条件づけの後半4日間では、40%溶液よりも20%溶液の方が多く摂取された。つまり前半4日間は、実際に溶液の濃度(栄養価)が異なっていたにもかかわらず、飲む量には差がなかったが、特定の風味の溶液には栄養が濃く、別の風味の溶液には栄養が薄いことを4日間経験した後には、薄い栄養の溶液をより多く飲むようになった。
さらに、テストの前半4日間において、以前に40%溶液と連合した風味が加えられた30%溶液を、以前に20%溶液と連合した風味が加えられた30%の溶液よりも、少なく摂取した。つまり、条件性飽和が生じた。つまり、テスト前半4日間では、実際に現在の溶液の濃度には差がないにもかかわらず、過去に濃い濃度であった風味の溶液をより少なく飲んだ。しかし、テストの後半4日間においては、溶液の摂取量に差はなくなり、条件性飽和の消去が見られた。
テスト前半4日間のリッキングに関して、30分間の実験セッションにおけるセッション内減少パターンを分析した。その結果、以前に40%溶液と連合した風味に対するリッキングと以前に20%溶液と連合した風味に対するリッキングとで、セッション内減少パターンは類似していた。つまり、条件性飽和により、セッション全体を通してリッキングの回数は少なくなったが、条件性飽和はセッション内減少パターンには影響しなかった。