研究紹介のページ 1 セッション内変動
Kenjiro Aoyama’s Page
研究紹介のページ 1 セッション内変動
Kenjiro Aoyama’s Page
私の研究分野は、学習心理学・動機づけの心理学です。
特に、食行動を中心とした動機づけ行動について実験的行動分析の立場から研究しています。
私は、ラットを用いて摂食行動について研究しています。専門的に言うと、餌を報酬とするオペラント行動のセッション内での変動について調べています。
わかりやすく人間の普段の行動にたとえてみますと、朝昼抜きで晩ご飯を食べるとき、はじめはものすごい勢いで食べ出すが、やがて食べるペースは低下してゆ きます。このペースの変化を記録し分析しています。当たり前のような現象ですが、「どのようにして、なぜ」食べるペースが低下するのか、ということは実は まだわかっていないのです。
実際には、右の写真のようなスキナー箱という装置を用いて、ラットの行動を調べています。この装置は箱の内部のレバーを押すと小さな餌が出てくるように なっています。この箱に空腹にしたラットを入れると、ラットは自分の好きなペースでレバーを押して餌を食べることができます。そのペースの変化を観察して います。
ちょ うど、「リンゴが木から落ちる」という当たり前の運動を詳しく調べることによって、物体の運動に関する法則が導き出されたように、このような研究を通じ て、行動の持続と終息に関する基本的な法則を発見したいというのが、私の研究の目標です。現在までのところ、私の研究では次のようなことがわかりました。
1)ラットが餌を食べるペース(一定時間あたりの食べる量)は、経過時間とともに右の図1のように曲線的に低下してゆく。
2)ラットの餌を食べるペースは、実験中にそれまでに食べた量が増加するにつれて、下の図2のように直線的に低下してゆく。
3)このことは、食べるペースは、食べた量に比例して低下することを意味する。
4)栄養の回復には時間がかかるため、実験セッションの最初から一貫して生じている食べるペースの低下の原因とは考えられない。
5)アメリカで共同研究をしていましたWashington State UniversityのMcSweeney教授の仮説では、食べ物に対して馴化(habituation)が生じるため、食べるペースが低下してゆくのだと考えられている。
6)回転車の中でラットが走る速度の変化も、全く同じパターンを描く。したがって、食行動のセッション内変動と走行行動のセッション内変動には共通の要因が作用していると考えられる。
セッション内変動
図1 経過時間に伴う食べるペースの低下
図2 食べ終わった量の増加に伴う食べるペースの低下