Topic 1:インターネット
心理学の視点で『インターネット』に迫る。
メールやブログ、SNSなど今や私たちの生活に欠かせないインターネット。
便利なツールなのは言うまでもありませんが、注意が必要な部分があることも確かです。
ここでは心理学とインターネットの関係に迫ってみましょう。
【CASE 1】「顔文字の印象を科学する」
顔文字を電子メールのメッセージに付けて送信すれば、より正確な感情を相手に伝達できますね。実際に、1文のメッセージに対して、顔文字を付けない条件、顔文字を1つだけ付ける条件、顔文字を3つも付ける条件を設定し、メッセージの受信者がどのような印象を受けるかが実験されました。その結果、顔文字を1つ付けると社会的で友好的だと感じられましたが、3つ付けると逆に社会的ではないと判断され、友好性も下がりました。つまり、付け過ぎると逆効果になることがうかがわれます。
KEY WORD
【感情伝達促進効果】
電子メールのメッセージ内容が嬉しいことだった場合、嬉しさを表す顔文字を付けると、相手に嬉しさが増幅されて伝達される現象です。メッセージ内容が怒りや悲しみに関するものである場合は、そのような増幅効果は消失します。
【顔文字による勘違いの例】
ある女性が事件に巻き込まれました。その女性は電子メールで友達に助けを求めたのですが、なんと顔文字を付けてしまいました。その結果、友達は緊急性が低いと受け止めて、被害者の救出が大きく遅れてしまいました。
【Google効果】
私たちはインターネット上の検索エンジンを使ってさまざまな情報を簡単に検索することができます。しかし、そのような情報はすぐに忘れてしまうことが実験によって明らかになりました。いつでも検索できるという考えが忘却に関連しているのかもしれませんね。
【CASE 2】「ネット依存を改善する」
「ネット依存」は、アルコール、ニコチンなどの物質の過剰摂取による依存症とは質的に異なります。しかし、自分の意思で、ネット使用が止められなくなり、日常生活に支障が生じてしまう、という点では似ています。そのため「誘惑に負けない心を育てれば、つまり意志を強くすれば、依存は改善できる」と考えがちです。しかし、そのような発想では、いっこうに依存は改善されません。実は、不適切なネット使用にも、第三者から観察することができる「本人も気づいていない理由」があるのです。それを科学的に調べ、整理し、その人に合った改善方法を見つけていきます。この方法は、専門的には行動分析学と呼ばれ、一般的には認知・行動療法の基礎の1つとして知られています。
KEY WORD
【行動分析学】
行動分析学は、ヒトの諸活動を、環境と個体との相互作用(=行動)から探求し、行動に関する因果法則を明らかにしていこうとする科学のことです。
【認知・行動療法】
クライエントの不適応な状態に関連する行動・情緒・認知的な問題を標的とし、行動科学の諸理論や行動変容の諸技法を用いて、それを軽減するとともに、適応的な反応を生起させていく治療法のことです。
【CASE 3】「フェイスブックの心理実験」
2014年に発表された69万人のフェイスブックユーザーを対象とした心理実験の結果は大きな波紋をよびました。フェイスブックのニュースフィードの表示から、ポジティブな表現を含む項目を減らすよう操作したところ、ポジティブな投稿が減り、ネガティブな投稿が増えるというように、ユーザーの感情が伝染していくことがわかったのです。ただし注目を集めたのは、直接対面することなくSNSにより感情の伝染が生じるという結果のインパクトではなく、無断で実験台にされたというユーザーの怒りが噴出した点です。フェイスブックの利用規約でユーザーはデータの使用に同意しており、民間企業が実施したため研究倫理審査委員会の審査対象とはならなかったという擁護論はありますが、フェイスブック社は実験が不安をかきたてたことについて謝罪をしています。
KEY WORD
【感情伝染】
ある人が感じているポジティブまたはネガティブな感情を周りの人も同じように感じるようになる現象のこと。主に直接やりとりする中で、表情や身振りといったノンバーバルな表現を通じて伝わるとされています。
【研究倫理審査委員会】
研究を行う際に、実験や調査の対象となる人や動物に与えるリスクを第三者がチェックするための機関。大学での心理学の研究は、倫理面で問題がないか、必ず審査を受けます。