一口に心理学といっても、その領域は多岐にわたります。中でも実験を主な手法とし、脳や神経のはたらきという観点から人の心を解き明かす生理心理学を専門とする畑先生と4名のゼミ生に、同志社心理での学びとその先に広がっている可能性について語り合っていただきました。
興味の幅を広げられる
多彩な学び。
— 初めに、心理学部に入学した理由と入学後に感じたことを教えてください。
武田さん | 身近な子どもや学生のメンタルに興味があり、実験を通して理解したいと考えていたので、1年次から実験できる同志社心理を志望しました。入学してまず驚いたのはその領域の幅広さ。行動、発達だけでなくさまざまな学びが実生活に結びつく楽しさを知りました。 |
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大塚さん | 高校時代、人の気持ちがわからず人間関係が悪くなったことがあり、自分や他人の気持ちの変化について学ぼうと心理学の道を志しました。最初はカウンセリングなど臨床心理の方へ進むつもりでしたが、多様な学びの中で、脳や神経のはたらきから人の行動を解明できることに興味を持つようになりました。 |
齊藤さん | 私はメンタリストの読心術に憧れていたことが理由だったので、実際の心理学は人の心を読む学問ではないことに衝撃を受けました。 |
豊田さん | 私も映画やドラマで描かれている心理戦が好きで、しぐさで心理を読んで優位に立てるのが面白いと感じ心理学部へ入学しました。しかし大学で心理学は人を助けるための学問だということを学び、考えが変わっていきました。 |
畑先生 | 高校までは心理学にそれほど多くの分野があるなんて知らないですよね。私も実は今の専門分野とは全く違う心理学に関心を持ったのがきっかけでしたが、さまざまな領域を見て今の研究に。多岐にわたる分野を扱うことで学生の可能性を広げられる点が同志社心理の大きな魅力です。 |
自分の「当たり前」に
疑問を持つことが大切。
— 4年間の学びの中でどのような力が身につきましたか。
豊田さん | 人のための学問という認識を強く抱いたのはレポート作成時です。読み手のことを考えてわかりやすく書くための指導が徹底されていたおかげで、文章力が身についたと感じています。また、卒業論文で、先行研究ではアンケート調査を行っていたところを実際の行動を見る実験で研究するという新しい挑戦ができたこと、そしてそれをやりきったことで、粘り強さと自信も得られました。 |
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齊藤さん | 私は卒業論文ではラットも人間と同じように怠けている他者に対して不公平感を抱くのか調べる実験をしたのですが、その際ラットのある行動に対して「不公平だと感じているのではないか」と人間的な感覚で結論づけていたことを指摘され、実験の結果から考察へと展開する際にも主観が入らないよう慎重に考えることの大切さを学びました。 |
畑先生 | 私たちは普段、人の気持ちや感じていることを想像します。もちろん社会ではある程度必要な行動ですが、心理学ではそれが果たして本当かどうか疑うところから始めます。動物実験を通してより客観的に考える力を養っています。 |
大塚さん | 私は自分たちが当たり前にできている時間を計るという行為について、脳や神経のどのような仕組みが関係しているのかについて研究しました。そういった概念を論文として見える形に落とし込むことは難しかった一方で、より適切にデータを扱えるようになりました。 |
畑先生 | 心理学は心という曖昧なものを扱うからこそ、実験の手法や手順の適切さが重要なのです。そのため、1年次から実証的なデータの大切さは当たりまえのこととして、データを得るときの手続きや方法の適切さにまで踏み込んで考える必要性を学びます。将来さまざまな分野に進んだときににも使える物事や心(行動)の捉え方のくせをつけてもらえればと思っています。 |
データの扱い方を知り、
心を解き明かす。
— 進路について教えてください。
豊田さん | 親が公務員で小さい頃から馴染みのある仕事だったので、公務員を目指して地元の予備校へ進学します。 |
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齊藤さん | 私は4人の中で唯一の就職組ですね。住んでいたマンションのゴミ出しのマナーが悪く、そのゴミがどうやって処理されているのか気になっていたことから、廃棄物の回収をしている会社に縁あって就職することになりました。面接でもゴミ出しのマナーと不公平感の関係などを話し、心理学と廃棄物のつながりに興味を持ってもらえました。 |
畑先生 | 心理学は誰にでも関係している学問なので、就職活動でも話が広がりやすいですね。動物実験が経験できるのも珍しいです。 |
齊藤さん | そうですね。実験はグループで行うことが多かったので、就職後もその経験を活かして周りとうまく連携をとっていきたいと思います。 |
大塚さん | 人の心を概念的に扱うよりは神経を基盤に研究したいと考え、脳科学研究科への進学を決めました。畑先生とは離れてしまうので寂しいですが、根底にある人の気持ちを理解したいという思いはこれからも変わりません。 |
武田さん | 私は教育学の大学院へ進学します。心理学を学ぶ中で、発達障害の子どもに関する知識や接し方を知り、日本の教育にも心理学を取り入れていきたいと思うようになったからです。大学院では実際に心理学の研究者が教育の現場に関わっている海外の事例について学んでいくつもりです。 |
畑先生 | 同じ研究の道でも心理学を経由して別の分野に進む学生は多いですね。皆さんの他にも哲学から入ったけれどもっと実証的に学びたくて心理学に来たり、心理学から入ったけれど生物つながりで植物学に行ったり。心理学は多様な分野の人が交わる場所なのです。 |
心理学は、さまざまな分野への道をつなぐ交差点。
— 最後に高校生へのメッセージをお願いします。
畑先生 | 今の話にも通じますが、心理学はさまざまな観点から研究できる学問なので、固定観念を壊して心理学に興味を持ってみてほしいです。例えば私の専門である生理心理学は高校までは理科に分類される生物学のような内容ですし,ストレスなどは保健・体育で,青年期の特徴であるモラトリアムなどは社会科で,赤ちゃんの発達などは家庭科で習います。つまり高校までに当たり前だと思っていた科目(あるいは文系・理系)の間には実は垣根などなかったことを知るのが,心理学を学ぶ面白さでもあります。「Sense of wonder」…つまり自然や生き物に対して畏怖の念や感動を抱ける人にとってはきっと面白いと感じてもらえるはず。 |
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武田さん | 私自身、進路に悩みながら学生生活を過ごしていましたが、ここで幅広く学べたおかげで、今教育学という道を見つけることができました。前向きな気持ちで新しい出会いに期待してもらえたらと思います。 |
齊藤さん | まだ比較的新しく伸びしろのある学問なので、先行研究にとらわれない実験など、色んなことに挑戦できますよ。 |
大塚さん | 心理学は就職だけでなく、人生を通してずっと役に立つもの。きっと学んでいて良かったと思える日が来るはずです。 |
豊田さん | 周りの意識の高さが刺激になり、学修資源が豊富に揃っている恵まれた環境があります。また、少人数制の授業が多いので友達ができますよ。自分から行動を起こせばいいものが得られる場所です。 |
きっと素晴らしい出会いが
待っている。
— ありがとうございました。