目に見えない「人の心」を科学的に分析する同志社の心理学。その分野は多岐にわたり、あらゆるものが研究対象になります。家族内コミュニケーションや夫婦関係、親子関係など、家族を中心テーマとした研究を専門とする興津先生と、3名のゼミ生に、同志社心理で得た学びや力について語っていただきました。
目に見えない人間の「心」に、興味を抱いて。
― 初めに、心理学部を志望した理由と入学後に感じたことを教えてください。
西川さん | 私は4人兄弟の末っ子なのですが、同じ家で一緒に育っていても兄弟の性格が全く違うことから、人間の内面に興味を持つようになりました。そして「人間の性格はどういう要素で決まっていくのかな」と考えるようになり、好奇心のおもむくままに心理学部を志望しました。授業を通じて、心理学が実は歴史ある学問であることを知り、さらに興味を持つようになりました。 |
---|---|
山守さん | 私が心理学に興味を持ったのは、高校1年生のときにあった「テーマをひとつ決めて論文を書いてみよう」という授業がきっかけです。「なぜ血液型占いなどの心理テストは科学的根拠がないのに信じられているのか」をテーマにしたのですが、発表のために心理学について調べていく中で、目に見えない心の動きを言葉にしていくところが面白いと思いました。また実際に学んでみると、実は統計学や理系の科目が多く、科学的であることを知りました。 |
清水さん | もともと子どもが好きで幼稚園の先生になりたいと思っていました。けれど大勢ではなく一人ひとりの子どもとじっくり関わる仕事がしたいと思うようになり、スクールカウンセラーになることをめざして心理学部を志望しました。心理学というとカウンセリングのイメージがあったのですが、授業では動物や機器を使った実験があることに驚きました。 |
興津先生 | みなさんの志望理由がさまざまなように、心理学を学びに来られる方の動機はバラエティに富んでいます。本などで心理学に触れて関心を持った人もいますし、西川さんのように身近なきっかけから人の心に興味を持っている人もいます。また、自分や家族が苦しんだ経験から「自分も誰かが苦境にあるときに手助けできるようになりたい」と考えて心理学を学ぶ人も少なくありません。 |
家族にまつわることを、それぞれの関心をもとに。
— 研究テーマについて教えてください。
山守さん | 卒業研究では、遺品を手放さず持っておくことに故人との関係がどう影響するのか調査を行いました。親への愛着のうち親から離れる「分離不安」に着目し、「分離不安が高い場合は、親との遺品を保持する傾向がある」「死別を予期してない人のほうが予期している人よりも遺品の量が多い」という仮説を立てて調査しました。 |
---|---|
西川さん | 私は「きょうだい構成、親からのきょうだい間の比較が個人の自己実現に与える影響」について研究しました。心理学の研究は答えのない問いが多いですが、突拍子もない考えから説を立てるのではなく、先行研究など信頼性ある根拠から論理を立て、検証することの大切さを卒論執筆で学んだと思います。この考え方は、社会人になっても役立つと思っています。 |
興津先生 | 論理展開は心理学部として大事にしているところですので、しっかりと修得してくれたのは嬉しいですね。清水さんは大学院生なので修士論文になりますが、いかがでしたか? |
清水さん | 私は「メンタライゼーションの形成に母親がどのような影響を持つのか」について研究しました。メンタライゼーションとは社会的認知能力のひとつで、人の心を理解する力のことなのですが、例えば自分がどこかに座ったとき人がぱっと立ち上がったら、ある人は「何か用事があったのだな」と思い、ある人は「私が来たらから席を離れたのだ」と思うなど、個人差があります。この違いはどこから生まれるのか。母親との関わりの中で出てくることまでは分かっているのですが、それが母親のメンタライゼーションから来るのか、それとも愛着スタイルや養育態度に関わるのかが明らかになっていないので、そこを研究しました。 |
学問や研究を楽しみ、実践に落とし込んでいく。
— 心理学を学ぶ中で印象に残っていること、成長したなと思うことはありますか。
西川さん | 私は興津先生の家族心理学の授業がすごく印象に残っています。夫婦間や家族間において知っておくと日常生活を彩ってくれそうな内容で、身近ですごく面白いものでした。まだレジュメを大事に置いてあります。 |
---|---|
興津先生 | 心理学は、私たちの日常生活と密接に関わる学問です。心理学の基礎的な力を身につけることで、身近なことについても自分の考え方を客観的に分析し、より良い判断を下すことができるようになります。 |
山守さん | 授業の中では、実習が印象に残っています。単なる知識だけでは現場での実践に役立てることができないことがよく理解できました。大学院に進んだ際には、さらに実習経験を積んでより現場で活躍できるよう努力していきたいです。 |
清水さん | 私の場合は、大学院の実習の中で、「以前は苦手だった脳の機能に関する勉強もしっかり学んでおくと実践で役立つ」という経験をし、学部時代に基礎を学ぶ重要さを実感することができました。 |
興津先生 | 公認心理師、臨床心理士になりたいと思う学生は、演習や実習を通して自分のできることと課題を見極めていきます。それらを言語化して認識し、向き合えるようになるのは大事なことですね。また、大学院生になると理論と実践が結びついてきます。やがて理論や知識を実践に落とし込めるようになっていけると思いますよ。 |
学部での学びを活かして、それぞれの夢を追いかける。
— 卒業後の進路について教えてください。
山守さん | 大学院に進学予定です。公認心理師の資格を取って、法務技官になりたいと思っています。学部卒でも法務技官になることはできるのですが、もう少し心理学を学びたいですし、病院などの現場経験を積んでから法務に関わったほうが良いと思い、大学院進学を選びました。 |
---|---|
清水さん | 私は奈良県で心理判定員として働く予定です。もともと子どもとじっくり関わりたいと思っていましたが、大学院の実習で児童相談所の一時保護所を経験したことが進路を決めるきっかけになりました。家族支援と子ども支援の両方ができるところに魅力を感じています。 |
興津先生 | 心理支援の仕事は大変ですが、人が生きていく力を得て、人生を切り開く瞬間に立ち会えたときは心から感動しますよ。西川さんは、一般企業に就職されますね。 |
西川さん | 私の就職先は人材業界で、クライアント企業と求職者の間に入り、新しい雇用を創出していく仕事です。社会に出れば、解決策がない難しい問題にも直面することがあると思いますが、心理学を学んで自己判断力を養ったので、その知識を仕事に活かしていきたいと考えています。 |
興津先生 | 心理学の学びを通して「与えられた情報や疑問に思ったことを鵜呑みにせず自分で確かめられる力」が身についていると思います。ぜひお仕事に活かしてください。 |
先生も学生も、興味関心にまっすぐ、楽しく学ぶ。
— 最後に、高校生へのメッセージをお願いします。
清水さん | 心理職として働くためには、生物・心理・社会モデルに基づいたアプローチが必要となりますが、同志社の心理学部では各分野を網羅的に学ぶことができるので、多角的な視点から見立てや支援を行うことができます。心理学に興味はあるけどどの分野を専門に勉強するか悩んでいる方には、各分野を全般的に勉強できる同志社の心理学部はぴったりだと思いますね。 |
---|---|
西川さん | 他の学部に比べて何を学んでいるかがわかりにくい印象がありますが、人の心を科学的なアプローチで解明する面白さがあります。そして心理学が日常に通じる学問であることを実感できると思います。人の心に興味がある人にはとても楽しい学びになるはず。心理学部で得た知識は、きっとみなさんの日常を彩ってくれます。 |
山守さん | 心理学はとても身近な学問です。知識の修得はもちろんですが、自分にも心当たりのある事象や生活の中でなんとなく疑問に思っていたことなどが、授業の中で解明されたりもします。そのためどんな人でも興味のわく学問なのではないかなと思います。 |
興津先生 | 同志社の心理学部は多様な心理学の領域を追究している先生がたくさんいますので、学生の好奇心を満たすのに十分な環境だと思います。先生方もみんな心理学が好きで楽しみながら研究しているので、その雰囲気を感じてもらえると嬉しいですね。ぜひ同志社大学で思う存分心理学を学んでください。 |
— ありがとうございました。