繊維製品消費科学, 1993, Vol.34, No.2, 66-70.
消費者心理の落とし穴 - 催眠商法の誘導テクニック(1)-
中 谷 内 一 也 ( 関 西 女 学 院 短 期 大 学 )
1. はじめに
キャッチセールス,恋人商法,マルチまがい商法に霊感商法・・・・・・各種悪徳商法が新聞やテレビを賑わせ,世はまさに消費者受難の時代である.ひとつひとつの悪質商法の内容を紹介していると1冊の本ができてしまうくらい,
悪質商法には様々な種類があるが,その手口はごく大ざっぱに,個人タイプと集団タイプに分けることができる.
個人タイプはキャッチセールスやアポイントメント商法などのように1人の人間を事務所などに呼び入れ,マンツーマンあるいは業者数人で入れ替わり立ち替わりして商品の購入を説得するものである.
集団タイプはセミナー型マルチ商法や催眠療法など,会場に多くの人を集め,集団あるいは群集の特性をいかして高額商品の契約へと導くものである.
今回は集団タイプの悪質商法の代表例として催眠商法をとりあげ,業者がどのようなテクニックを駆使して消費者を誘導しているのかを心理学的な視点から解説する.
催眠商法は悪質商法であり,消費者保護の観点から避難,攻撃されるべきものであることは言うまでもないが,
一方,販売促進のイベントとしてみた場合,非常に洗練された側面もあり,良識あるマーケターや広告関係者にとっても参考になる要素が多く含まれているように思われる.
(本文より抜粋)
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